2020年2月5日水曜日

盛岡

Sが、寒い街を君とぶらぶら歩きたい なんておとめちっくなことを言い出すので盛岡に行きました。

盛岡といえば、去年の宝塚雪組公演『壬生義士伝』主人公の吉村の故郷じゃん…と気づいたのは行きの新幹線。吉村はことあるごとに盛岡自慢をする賢治人事部長(ぷりぷり県)のような男ですが故郷に帰れず死ぬのよね…もう車内で悲しくなってきた。吉村、わたし盛岡の素敵なとこたくさん見てくるね!!

まずはわんこそば。東屋という老舗のお蕎麦屋さん。
 ゆっくりあったかいものが食べたいのでわたしはわんこそばしないよとつれなく言っていたためSが一人でトライすることになったのだが彼は食が細いタイプだし、それこそ静かに食事をしたいタイプなので意外なトライだった。平均50杯のとこ、ちょうど半分くらいだったね。普通にお蕎麦美味しかったそうです、良かったね。

この日はとにかくのんびりお散歩するみたいに過ごそうね、ということで喫茶店でダラダラしたりお城の跡地を見に行ったりちょこちょこお買い物したり。前に義母と訪ねた時にお休みだったござ九で義母へのお土産として花器も買えた。
盛岡の何が好きかってやっぱり街の中を大きな川が流れていることでしょうか。この川沿いをずーっとただただ歩くだけで楽しい。盛岡の人は川辺でタバコを吸うのね。その様子を川辺にある喫茶店ふかくさでお茶しつつ眺めてました。

途中ひっそり佇む、宮沢賢治による岩手病院への詩(の石碑)、美しくて怖くてなんというかわたしのイメージの盛岡感そのものだ。


夜はSの職場の人がオススメのビアパブベアレンへ。盛岡のビールベアレン直営のレストランとってもとっても美味しいかつ安価かつ人がいなくてでびっくりした。
暗くなると、盛岡駅前でさえそんなに人がおらず、レストランがある付近の場所は本当に静かで暗くって、ああ東京と全然違うんだなあと不思議な感慨がした。わたしが知っているどの街にも似ていない感じ。嬉しい。

翌朝、ホテルの朝食、主に小岩井の牛乳やら岩泉ヨーグルトやらせんべい汁やらでお腹をパツンパツンにしてしまった。Sは少しの卵料理とコーヒーとかそんな感じ。ほんとわたし卑しいよな〜と恥ずかしくなるんだけど、おいしすぎる乳製品(およびご当地メニュー)出されて我慢できます?!!牛乳は2杯飲んだ。

この日もバスに乗ってぐるぐる市内を巡ったんだけど、この日のハイライトは二つ。
一つは憧れの、みちのくあかね会に行くこと。
工房と販売所があるのかな〜と思ってたんだけどもマップのアプリを見つつたどり着いた場所は、小さな小さなむかーーしの小学校みたいな建物のみでどう考えても気軽に入れる感じじゃない…
オロオロしているわたしに工房の人が気づいて、今そこにある商品と工房の中を見学していってと入れてくれた。
ふわふわの糸にする前の羊毛や織り機を見せてもらって感激したのだけども、工房はちょうどお昼休みで女性たちが車座になってスカーレットを見ていてそれが一番なんだかずっと覚えてるだろうな〜って感じだ。
いつかはここのマフラーを…と思ってたのだけど好きな柄がたまたま出払っていたので、明るい緑色の名刺入れを買いました。ミニ財布にするつもり。
左上は光原社で購入した刺し子のティッシュケース。は〜〜〜東北の手仕事よ。なんて可愛いのよ。可愛さの天才じゃん…

二つ目は岩手県立美術館で松本竣介の絵をたくさん見られたこと。
ご当地画家なので常設展で多くの作品が展示されているのです、ということを以前仕事でこの美術館に来たことがあるSに言われてそれは是が非でも!とトコトコ歩いて向かったのだった。

道中岩手山が綺麗に見えて嬉しい。やっぱり歌いますよね、西のお山は岩手山〜〜!!(雪組『壬生義士伝』より。とってもいいお歌です)

松本竣介の絵は御多分に洩れずあの青が基調の都市を描いた作品群が大好きでむちゃくちゃ間近で見られてもう本当に感激しましたけども、そうそうわたし「Y市の橋」も好きなのよね〜。とホクホクしつつソファに置いてあった図録で解説を読んだりしたのです。
するとですよ。松本竣介の親友、同郷の彫刻家である舟越保武氏による文章が載っていてその場でブワッと涙が出てしまった。

あの橋の上から、竣介は手をふって私のところへ戻って来た。『暗くなった。かえろう』といってスケッチブックを閉じた。夕暮れの中に竣介は白っぽい服を着て立っていた。仕事を終えて、熱っぽい顔をしていた。」
 しかし、彼は竣介が亡くなり随分たってから再び「あの橋」を訪れた時、錯覚だったことにはたと気づく。「私は一度もこの辺に来たことがなかったのだ。竣介と一緒に横浜に来たこともなかったと気がついた。……竣介の絵《Y市の橋》を何べんも見ている中に、いつしか私があの絵の中に入り込んでしまって、想像が現実のようになって、私の中に焼きついたのであろうか。……竣介は36歳で死んだ。その生涯は短くとも、絵描き一筋の充実したものであった。竣介の描いた風景は、陽が落ちるときのあの微妙な青の中に沈み込む都会の哀愁がある。たしかな構築の上にただよう詩情がある。」(舟越保武『巨岩と花びら』)

こんな美しくて切ない話そうそうないよ…

そしてさらにこの美術館、松本竣介の展示室とつながって舟越保武の作品の展示室があるのです…なんなん…昔からの親友たちの作品が今隣同士で故郷の美術館に飾られてるってもう…

そしてその舟越保武の作品、とても美しく静かで迫力があった。
教会を見学するのは好きだけど、特定の宗教を持たないわたしにとってその「信心」って興味深い謎に思えるのだけども、クリスチャンである氏の作品、特に「聖セシリア」像はあまりに美しく、叶うならこんなに美しいものと共にありたい、すがりたい、という気持ちになった。信心ってそんなことじゃないと言われるかもしれないが、こんなにきれいなもの、信じたいなー!と素直な気持ちで思った。本当に美しかった。


合間に白龍のじゃじゃ麺食べたり(てくりで以前特集されたの読んで以来行ってみたかったの!感想:何度か食べることで良さがわかりそう、というわたしの中の伊勢うどんジャンル)可愛いお土産買ったり笹かま食べたりお茶したり、本当に呑気に楽しく過ごした。

可愛いお土産の一部はこちら。


秋田犬、盛岡じゃないのはわかってるけど可愛すぎて…


二度目の盛岡は、街の中をゆったり流れる大きな川、ぐるりお山に囲まれた地形、とにかく静かで夜になると人がふっと消えてしまうところ、県庁とかあるあの辺りの、静かなのだけど急に古くて大きな建物がブワンと並び出すあのなんとなく不安になる感じ、全てがわたしの知らない街の風景でかつ好もしく、ますます憧れは募る一方。吉村、あなたがこの街にこだわる理由、よくわかります。


次に来るときは銀河鉄道にも乗ってみたいな、本当の幸いを探すのだ。



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